October 01, 2004

閃光

場所は、熊野灘の外洋に面した私のホームグラウンドとも言えるポイント。
水温20度、天候晴れ、10月の下旬の秋も終盤にさしかかった少し肌寒い日のダイビングで、潮も速かった。
約水深20メートルの海底では、70センチ級のブダイツンブリの群れハナミノカサゴなどと戯れ、20分ほど潜っていたが、寒くなってきたので、バディと合図をして、その日の一本目のダイビングを終わらせようとしていた。

軽くフィンキックをして、浮上にかかる。
BCの中で増えた余分なエアーを抜きながら静かに浮上していった。
海面を見上げると、太陽の光が差し込みキラキラ輝いている。
綺麗だ。

と思った瞬間、目の前に突然稲妻が光ったように見えた。
ものすごい早さで目の前を魚の群れが私たちの周りを回っている。
でかい
体長は、30センチ〜50センチの無数の魚が私たちを取り囲んだ。

秋の太陽の光に輝く体の真ん中に黄色い筋・・・
シマアジだ!

眩しいばかりの銀色の下地に、金箔をちりばめた屏風のようだ。
その美しい屏風に周りを取り囲まれ、現実から心が解き放たれる。
時折、閃光が私たちの心の中を通り抜ける刺激が心地よい。

なんとも言い難い浮遊間、海水に解けてしまいそうな至福の時が私たちを包み込む。

やがてその閃光が、私たちの前からいなくなった時、自分の頬をつねりたくなるような衝動に駆られた。
さっきのは現実だったのだろうか・・・

その夢見心地が終わらぬ間に海面に浮かび上がってしまった。
一瞬バディと目を合わし、現実だったことを再確認する。

時間にすると、数分だったか数秒だったか・・・。
そんなことはどうでもいい。
私たちは、一瞬でもこの世の自然と一体になる幸せを手に入れたのだから。

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